天城診療所の肝臓先生

投稿者: | 21/01/21

 さて、2020年は新型コロナウイルスによって日本でも前代未聞の事態になりました。
世界中に拡散した速さと猛威には言葉も失います。
改めて100年前のスペイン風邪の事も話題になりました。
前出の天城診療所の佐藤清一先生は、学生時代に京都でスペイン風邪にかかり、
高熱で死にかけたそうです。
 当時、あまりにバタバタと死者が出たので皆逃げてしまって下宿には誰もいない。
それでも世話を頼んでくれた人がいて、命拾いをしたとの事。

 肝臓先生と呼ばれるのは、日本で初めて流行性肝炎を発見し、
その治療に孤軍奮闘した医師だったからです。天城先生の著書「肝臓先生」の
中からコロナ禍の今、知っておくべき事が多いのでご紹介します。

 戦時中、チブスなどの伝染病が年々増加していました。当時の新聞で、
一年で2~3千ぐらいだったチブス患者が七~八千くらいになっていると報じたそうです。
2、3年前と比べて体重も皆一貫目や二貫目は普通で四貫目くらい減った人もいると
書かれています。一貫目とは3.75㎏ですから4~7㎏、中には15㎏も痩せたというのです。

 また疲れやすくなったり、足がしびれたりする脚気(かっけ)が多く、急性肺炎、
脳出血、胃潰瘍、十二指腸潰瘍で目立って死亡する人が増えました。
結核病院はどこも満床だったそうです。
先生は、原因はみな食料不足とされている事に疑問を持ち、
「戦争により大陸との人や物の往来が急激に増えて未知の病気も大陸から
やって来たのではないか」と考えたのです。

 現にデング熱は大阪、九州方面にたくさんあったとの事。
戦時中の日本に発生していたとは驚きです。
 デング熱と云えば、ブラジルで大流行し、
2014年に日本でも代々木公園で蚊に刺された若者が発病し、高熱と発疹が出て
大騒ぎとなり飛行機の中の蚊を探して駆除する騒ぎとなりましたよね。

 先生は、戦時下ではマラリアや赤痢も帰還軍人が持ってきている。
これらの病気は症状が激しく、人々が恐れて用心したが
「あまり目立たず、こっそりと来ていた病気は知られずに
 日本中に蔓延していったのでは 」と推測していました。